今回は、当サイトへお寄せいただいた扇子に関する体験談をご紹介します。
子供の頃に親戚に貰った扇子についての体験談です。
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親戚から貰った子供向けの扇子
東京都在住の23歳女性です。
私には思い出の扇子が一つあります。
昔、確か幼稚園くらいのことだったと思うのですが、親戚のおばさんから頂いたものです。
当時は何かと親戚の集まりがあり、そういった集まりは中学生・高校生ともなれば友だちだ部活だと参加しなくなるものですが、まだまだ幼かった私はよく行っていました。
場所は本家であるいとこの家だったのですが、本家とはいえ私の家の向かいにあるので気軽に行けるというのもありました。
幼き日の思い出の中の扇子
そこには当然同世代のいとこや、遠い親せきの子供たちも多く集まっていて、ほぼ知らないようなおばさん・おじさんたちからお小遣いをもらうことも多くありました。
そしてお金ではなく物で貰うこともありました。
アクセサリーの詰め合わせだったり、キーホルダーだったり、人形だったり。
貰ったその場でつけてみたり開けてみたりして、やれそっちの方が可愛いだのこっちの方が大人っぽいだのと騒いで、大人たちも一緒に見ながら「それは少し大人っぽいから○○がもらったら?」「じゃぁ、××は代わりにこれをあげたらいい」などと口を出して一緒に楽しむわけです。
おじさんおばさん達がくれるそれらは、時に他の親せきの子供たちとお揃いで、また時には色違いだったりします。
扇子も、そうやって貰ったものの中の一つです。
地は紙素材でできており、ピンク地にクマの天使が飛んでいるというファンシーなデザインでした。
まったく大人が実用的に使うようなものではなく、「子供向けのおもちゃの扇子」といったようなものです。
しかし中骨や親骨はしっかりと竹でできていました。
例によって、他の子供たちも私と同じものを持っていました。
当時の思い出がよみがえってくる扇子
私はその扇子を今でも持っています。
机の上のペンたての中に、シャーペンやボールペンと一緒に立てかけてあるのです。
だいぶ軋むような感触を得ながら開いてみると、扇子のピンク地は記憶にあるよりくすんでいて、「可愛い扇子」は「〝子供のおもちゃみたいで〟可愛い扇子」へと変わっています。
印刷されたピンク色やクマの天使の絵は、長年折りたたまれていたことで折線がくっきりとつき、その部分だけ白く削れて線が入っています。
もう劣化したその扇子を見ていると色々な思い出がよみがえってきます。
いつものいとこの家に集まった大勢の大人たちや、普段はあまり会えない子供たち、線香の香りに、なんといっても多くの親せきが一堂に会していたあの場特有の雰囲気を思い出すことができるのです。
あのときの子供たちは私を含め多くが大人になって、もうあのときのように「皆で集まる」というのは難しいでしょう。
例え集まったとしても、もう子供ではなくなってしまった私が子供だったときに感じたあの空気を味わうことはできないと思います。
それでも、あのときに貰った物を見ているとあのときの空気がよみがえってきます。
この扇子も、それ自体が思い出を有している大切なものの一つです。
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今回の体験談は以上になります。
京扇子は大切に扱えば長く使えますし、思い出の品としてずっと持ってらっしゃる方も多いかと思います。
愛用していた扇子をふとみてそれを使っていた当時に思いを馳せるのも素敵ですね。
当店「山武扇舗」のネット通販では、京都製の京扇子を多数扱っていますので、よろしければそちらもご覧ください。